2022年02月24日

物価上昇への備え


昨年秋ぐらいから色んな物の物価が上がってきています>

50代の私から見ると物価は社会人になってからほぼ30年上がっていません。
物価の優等生と言われる卵は全くと言っていいほど上がっていませんし、仕事柄スーツの値段を考えますが、スーツの値段に関して言えば、バブル期の当時は1着10万円が当たり前でしたから、1着3万円以下のスーツは、当時の基準から見れば驚愕に値します。

でも、実は色んなところでジワジワ物価は上がってきました。

分かり易いのは、車でしょうか?
昔は、軽自動車と言えば全部入れても150万円ぐらいだったでしょうか?
それが最近は軽く200万円を超えています。

足許でも日用品や食料品がこれまでは量を減らしたステルス値上げでやり過ごしていた物が、このままではスカスカになってしまうためか?リアルに値上げし始めてきました。

海外のインフレ傾向を考えると今度こそ日本もインフレモードに入ってきたような気がします。

経済学的には物価は【物とお金の交換比率】の問題です。
つまりお金と物を比べた時、将来的に物の値段が上がると思うならば、お金をタンス預金にしないで先に物を手当てします。
逆に(これが過去20年の日本の傾向ですが)お金と比べた物の価値が下がる(デフレ)と考えれば、人は物を買わずお金で財を保ちます。

そこで1つ上に書いた「今度こそ日本もインフレ」ですが、私は企業の経営判断として今回の物価上昇の波は継続すると考えています。

実のところ、当社の周辺環境でもこんなことが起きてきています。

・石油製品関係の値上げ(釦、裏地)
・物流費の上昇 および納期遅延
・生地の原毛の国際相場上昇
・生地の仕入価格上昇 および納期遅延


私が非常に気にしているのは※を付けた納期遅延です。

これまでは、輸入代理店をしているエージェントに納期遅延があった場合、強烈なクレームを言えば、現地にクレームをつけ船便を一部航空便に変えるなど、一定の便宜を諮ってもらえましたが、最近は違うのです。

遅延等でクレームを言うと、次から仕入れられなくなる。

つまり本国の方は、普段から日本はロットが少ないうえに、価格は厳しく、とかく文句を付けると思われていて、「だったら他所に売るからもういいよ」というのが今の雰囲気なのです。

ですから(言い訳になりますが)この春夏は商品の入荷がどこも遅れています。

私にはこれが物価上昇のきっかけになるのでは?と思えてなりません。

話は変わりますが、ビッグヴィジョンでは自社で生地を在庫しておりますが、デフレ下のこの10年は必死になって在庫減らしに努めておりました。

ですが上述の通り、物とお金の交換の中で物の方が有利(インフレ)になると判断しましたので今年から生地をどんどん仕入れるように方向変換しました。
(このブログを読むと仕入先が喜ぶかな?)

そのことがお客様目線で具体的に見えるようになるのは、3月決算セールからだと思いますが、どんな新しい商品が入るか?お客様も楽しみにしていてください。

posted by オーダースーツのヨシムラ at 15:00| Comment(0) | 仕事(営業戦略) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年02月23日

あるべきオーナー企業の姿



オーナー企業というと悪いイメージを持つ人が多いと思います。
よくある悪いイメージは、会社の私物化で、会社の金で豪遊したり、従業員を奴隷のように扱ったり、と確かに現実にはこういう会社もあるのだと思います。

ですが、逆説的ですがこういった会社を見てオーナー企業を批判することが出来るでしょうか。

とある会社の話。

その会社は、社歴は長く50-60年位?オーナー企業で高度成長と共に大きく躍進し、当時は従業員も1000人近くいた業界では有名なメーカーでした。
業績もまずまずだったのですが、5年位にオーナー一族が投資ファンドに会社を売り、以来、ファンドが経営していました。

ファンドが経営といっても頭でっかちなファンドの社員には、専門性の高いメーカーの経営はできません。

ですから表向きの代表は、古参の社員が代表を務めていました。
その古参社員は、人柄は良く真面目な方でしたが、いかんせん、経営者としての教育を受けた方ではなく、(言葉は悪いですが)工場長位の器の方でした。

ここで、新型コロナが猛威を振るい始めます。

業績は、そこの製品を売る店が営業できなくなり急低下します。
2021年度決算は大赤字でした。

結果、ファンドはその会社を見限り、従業員の多くを解雇し、主だった資産を売却することにしました。
ファンドは不動産などの資産を売却したことで、損は回収したようです。

実はこういった会社に先日お邪魔する機会がありました。

社員は既に解雇され、もぬけの殻でした。
食堂には、その地域のハローワークの臨時受付所(?)になっていて解雇された社員たちの再就職の場を会社が準備していたのだと思います。

・・・とそんなお話です。

これを見た私はオーナーを失ったオーナー企業(サラリーマン企業化した元オーナー企業)の成れの果てを見たような気がしました。

何が違うか?
それは危機に対して長期に対する視点あがくことだと思います。

その会社と当社は業種業態が違うため単純な比較はできません。

ですが詳しく会社分析をすると、その会社は従前、特定企業の売上が全体売上に対して突出して高く、私から見るとすごくリスクに感じてました。
新型コロナにより、その売上高が突出した企業がダメになり、結果、連鎖的に業績が悪化したのです。
更に言えば、取引条件が悪く、相当な製品在庫を持たされていたのでこれも業績を圧迫した要因だったと思います。

何故、その取引先だけに売上を集中させてしまったのか?

私だったらファンドに会社を売る時に、その取引先にも一定割合の株式を持ってもらうよう交渉したと思います。
そしてもし、それを断れたのなら、その取引先の売上シェアを落とすように頭を下げてでもお願いしたと思います。

これは【長期的なリスクに対する視点】が足りなかったことに他ならないと思います。

もちろん、長期的なリスクを予見することなど自分も含めて殆どの人はできないでしょう。
だから次の【あがくこと】なのです。

新型コロナにより当社(ビッグヴィジョン、ヨシムラ、オリテック)の3社も大打撃を受けました。
特に、多店舗展開しているビッグヴィジョンとその製造を司るオリテックは、前が売れなければ、後ろの製造も枯渇してダブルパンチになります。

ですからコロナ禍で私がしたことは、販売と製造のマイナスノスパイラルからの回避でした。
この2年、全精力をそれに注いでいたといっても過言ではありません。

具体的に何をしたか?
それは2021年度で言えば、医療用防護服の縫製受託でした。

結果、販売のビッグヴィジョンの方は業績はどうしても悪化しましたが、縫製工場の方は何とか黒字を維持できました。

これは会社が持っていた本来の業務能力ではなく【あがいた】結果生まれた産物です。

オーナー企業は、普通は個人で連帯保証をしていますから、もし仮に会社が倒産すれば家屋敷含め全てを召し取られてしまいます。

だからこそ必死です。
また、長年企業を維持していた自負から来る責任感もあります。
会社の関係者というのは雇っている従業員の数ではありません。
従業員数の家族を含めれば3〜4倍の関係者がおります。

彼らの生活を背負うこと、この意識はやはりオーナー経営者でなければ負えない重責なのでしょうか?

【長期的な視点】と【あがくこと】これに早い決断力をもって運営することがオーナー企業に必要なことなのだと思います。

今回、件の会社に出向くことで、改めて自分の責任を痛感しました。

当社も社歴だけは長く、吉村株式会社の方は130年以上の歴史があります。
私の責務は、それを永続することであり、個人の生活を豊かにすることではありません。
私のビジネスパーソンとしての賞味期限はあと10年位でしょうけれど、それまで気を抜かず全力で走りぬきたいと思います。

posted by オーダースーツのヨシムラ at 08:06| Comment(0) | 仕事のこと | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする