今週は仕事で青森工場へ訪問しておりました。
仕事の内容はというと、結構大変な仕事が多く
@10月からの最低賃金引上げに際して工員の給与をどうするか?
A最賃上昇に伴い、販売店へ縫製工賃をどう引き上げるか?
の議論していました。
そして、この議論の中に何故かヨシムラの若手販売スタッフ河本君を同行させました。
内容的には河本君には全く関係のない話で彼にとっては「なにゆえこの時期に青森工場へ?」というのが本音でしょう。
まして、彼が青森工場に出張すれば、工場側で相手をする幹部連中は全員、上述の会議に参加しているため、彼を構ってあげる人もいません。
つまり工場に行っても会議に参加する他、すべきことがないのです。(ちょっと大げさに言っていますが)
でも実は河本君に青森出張してもらったのには訳がありました。
それは、青森工場の若手スタッフとの交流をさせたかったのです。
個人的思い入れなのかもしれませんが、私が代表をやっている会社(吉村、ビッグヴィジョン、青森工場、新潟工場)の中で、今一番人材が充実しているのは青森工場だと思っています。
でもこれは以前から青森工場が優れていたという訳ではありません。
遡れば、数度に渡る経営危機(私が代表になる前の話)、新工場への移転、新型コロナで売上急減などの経営的な難局を乗り切った一方で、7Daysオーダーという他工場にできない商品を作ったりと、特にこの5年間は本当に大変で、それを乗り切ったからこそ人材が強化されたのだと思います。
そしてこれを支えてくれたのが青森工場の20代後半〜40代前半の若手幹部たちだったからです。
河本君もその年齢に近づいてきているので、彼らから何か良い刺激を受けて貰いたい!との想いから私と一緒の出張を許可したのです。
狙いは的中したか?それは今後の彼の意識・行動を見るしかありませんが、良い結果に結びつくとありがたいです。
それはさておき、上述@給与改定とA工賃改定ですが、議論がなかなか白熱しました。
まず、工場幹部が口を揃えて私に言っていたことは
@については自分の部下の給与を上げてあげたいから私に「何とか給与アップして!」と食い下がってきました。
一方で、Aについては、顧客(販売店)から取引を中止する言われたり、値上げを突っぱねられるのが怖いからと言って、コストアップ以下の工賃アップで話をまとめようとしてきました。
で、ここからが私の役目。こう言いました。
『君たちが、自分達が良い生活をしたいと思うなら工賃を上げなければ出来ないよ。
一方で、質を上げることを追求せず他社と比べて見劣りする製品を出すなら、工賃も上げられないし、それは結果的には自分達の給料が安くなるということだよ。』
『どっちがいい?』
『「厳しく仕事をして高い給料を貰う」か「ぼちぼち仕事をして最低賃金で甘んじるか」僕はどちらでも良いよ!』
議論の行方は?
もちろん前者で若手幹部の意見はまとまりました!
準備は整った!さぁ、次への挑戦だ!
2023年09月22日
2023年09月11日
企業の倒産について考える
先日、学校や自衛隊などに給食の配膳をしている会社が倒産しました。
この倒産に関して一連の報道を見ていて思ったことですが、倒産した企業に対してメディアの論調がなんと冷たい事か。
企業にとって倒産は死を意味します。
上場している会社を除けば殆どの企業の社長さんは銀行等に対して連帯保証をしていますから、倒産=企業の死=自分の死に直結します。
もちろんそれまで良い思いをしていたでしょう?!とか倒産しても個人資産の一部を残している会社(社長)はいるでしょう。
でも、殆どのケースでは身銭を会社に貸し付けた後の倒産です。
ですから、社長自らの死といっても過言ではないと思います。
一方、倒産した会社に対してのメディアの論調ですが、傾向があるように思います。
それは、消費者に直結する会社に対しては非常に厳しい、ということ。
例えば、我々の業界でも例えば、成人式の晴れ着レンタルの会社が直前に倒産した時や倒産とは少し違いますが、学生服販売店が制服を入学式まで届けられなかったケース。
「一生に一度のことなのに可哀想」がキーワードとなり、その企業叩きが始まります。
今回のケースでも「子供たちが可哀そう」的論調が多いです。
どうして、その問題?を起こした企業のそこまでの努力を認めてあげないのでしょうか?
今回のケースでも倒産の原因は@廉価受注であり、A急激なインフレが2番目の要因です。
聞けば、Aに対して値上げの要請をしていたにもかかわらず、どこも受け入れず、やむに已まれず倒産と聞きます。
よく、日本人は優しいと言われていますし、自画自賛してメディアはこれを発信していますが、本当に優しいのでしょうか?
納入企業も昨今のインフレを考えれば安値受注で受注先が疲弊するのは目に見えているのに、契約を武器に一切受け入れず。
メディアも消費者関連ということで“善良な個人に対して企業は悪”とばかりに経営者を叩く。
どこか間違っているのではないでしょうか?
メディアは個人=情報不足≒無知 ⇒ だから善 というニュアンスで物事を判断しますが、私は子供には『無知=悪』だから勉強して、知識という武器を身に纏いなさいと教えました。(し、教えられました。)
福沢諭吉は学問ノススメで「天は人の上に人を造らず・・・」といっていますが、あれは『人は皆平等だ!』と言っている訳ではありません。
「天は人の上に人を造らないが、実際には身分の違いや貴賤、金持ちと貧乏人など沢山ある」
→どうしてか?どうすれば良いのだろう?
⇒皆、学問をすれば豊かになれるんじゃないか?
という話です。
話を戻します。
企業を経営するというのは、結構大変なことです。
過労死で死んでも労災は下りないし、残業代もありません。
寝食を忘れて仕事をした結果、不幸にも会社を潰してしまった方に対してもう少し社会が寛容になってくれることを祈ります。
2023年09月08日
〜 値上げの秋 〜
9月に入りいよいよ本格的な秋冬シーズンに突入しました。
シーズンが変わるということは商品もガラッと変わる。
そうなると怖いのが商品の入れ替えと同時に行われる価格改訂。
特にファッション業界は商品すべてが入れ替わりますから新商品が入るタイミングで、というお店は多いです。
実際、今朝の業界新聞(繊研新聞)でも一面で取り上げられていたのですが、記事では専門店では春夏物に引き続き値上げだそうです。
原因はといえば、これは言わずもがなですが、
@円安で原料価格が上がっていること。
A縫製工賃も国内縫製なら最低賃金上昇で加工賃が上がっていること。
B海外縫製でもインフレと円安で縫製工賃は上がっている。
このため原料も加工賃も2-3割アップしているとのことでどこでも同じなのだな、と思います。
では、この秋のビッグヴィジョンは?ですが、ビッグヴィジョンでは一部オプション料金とこれまで割安だったアイテムの価格改訂は行いますが、ベースのスーツ価格の値上げは行わない予定です!
でも、それもいつまで続くか分かりませんので半期決算セールでお早めにお求めくださいネ!
※おまけ※
ファッション業界は素材調達が販売に対して1年先行するためこの秋の価格は昨年の夏の為替水準(1ドル130円水準)がこの秋冬の価格と考えると良いと思います。
2023年09月06日
副業型テーラーの淘汰
読者の皆さんには洋服を仕立てるテーラーにはどんな会社があるか、どんなご認識でしょう?
これは個別の会社ではなく、どんな業態の会社が多いかという話なのですが、昔からあるテーラーには次のような業態がありました。
・個人経営のテーラー
・古くからのチェーン展開のオーダースーツ店 ※1
・百貨店
・関連業界からの参入 ※2
※1:ビッグヴィジョンはこちら
※2:ヨシムラは元が生地屋なのでどちらかというとこちら
これらは老舗が多く今でも多くのお店がありますね。
それがこの10年ぐらいでオーダースーツマーケットにこんな参入者が現れました。
・アパレル(既製服屋)からの参入 AOKI・青山・コナカなどなど
・IT系・NET系企業からの参入
そして、この↑2つは資金力もあり、チェーン展開しているお店もあるのですが、中小規模ではこんな参入組もありました。
・副業型テーラー
副業型というのは私が勝手につけた名前ですが、ようは本業があり顧客基盤をある程度持っているので、その顧客に対して、スーツも販売して売上をふやそう!という営業スタイルです。
ですから、参入者は建設屋さん、保険屋さん、イベント屋さんなど多岐に渡りますが、どちらかというと大きな法人組織ではなく、個人経営の方が旺盛な事業意欲の結果、たどり着くというのが多いです。
で、私は生地屋の社長あるいは縫製工場の社長として、これらの皆さんのサポートを行うことがここ5年位結構ありました。
具体的には、副業型のテーラーは仕立てのプロではないため縫製が分からない、採寸が分からない、パターンが分からないなど【分からないこと】づくめのため、作成した仕様書のチェックやお客様からの質問へ回答を用意するなど、です。
酷い例では、採寸があまりに出来なくて、採寸だけ代わりに我々が行うなんてこともありました。
そして、この副業型テーラーはコロナ前までは結構な件数があったと思います。
(発注を頂けるのでこちらも最大限協力しました。)
ですが、コロナの3年間を経て、これら副業型テーラーが今まさに淘汰されようとしています。
つい先日もある副業型テーラーへの業務支援を行っている会社が廃業するとの連絡が来ました。
どうやら新型コロナで打撃を受け、コロナの期間はコロナ融資で何とか生きながらえていたのが、ここにきてコロナ融資の返済が始まり行き詰ったようです。
業界の人間として、一連の副業型テーラーの淘汰については複雑な心境です。
当初は、こういった旺盛な事業意欲のある人達が、当社のような既存企業の刺激となり業界を活性化するのかな?と思っていましたが、いざ淘汰の憂き目を見ると、真面目に商売をしていない(副業型は専門性が低い)とやはり最後は生き残れないのか?など。
新型コロナは人の命を奪いましたが、仕事を奪った面もあるんですね。