2015年02月24日

アベノミクスが成功するために・・・

前回のブログが少々砕けすぎた内容でしたから今日は少し難しいことを書きます。

皆さんもよくご存知のアベノミクス
直近では株価も18,500円位まで戻り、株を持っている人にはプチ資産効果も出ているようですが、このアベノミクスが踊り場を迎えるといわれてかれこれ1年近く経っていますね。

最初は日銀の黒田バズーカで金融緩和をして、上手く行きそうだったインフレ2%目標や景気回復も最近は、昨年4月の消費税引き上げや原油安で微妙な空気が漂ってきていますね。
皆さんの業界ではどうでしょうか?

今日はこの点を、主として縫製工場業界の立場で考えてみたいと思います。
※:ビッグヴィジョンやヨシムラの立場ではありません。

さて、アベノミクスと私たちの業界ですが、
よく民主党などが批判するアベノミクス批判の中に、アベノミクスは大企業中心で中小企業や地方にはその恩恵が行き渡っていないという批判があります。

これは私はある部分では正しいと思っているのですが、それをオーダースーツ業界に当てはめるとこうなります。

大企業:大手アパレルや大手百貨店は上場していますし、毎期毎期巨額の利益を安定的に上げています。
また、昨今はインバウンドなどとも言われ、高額消費が増税前以上に高まっています。

一方、これが地方の縫製工場はどうか?というと、
小売業界が高級路線で単価が上がっても1着は1着で変わらないため、利益は増えません
また数が増えても後述の理由で利益にはつながらないのです。
つまり、国産スーツは35,000円ぐらいのスーツが1着売れても、ゼニアが1着でも工賃は全く変わらず、儲からないのです。

この点、実はもっと深刻な状況が地方の縫製工場にはあります。
何かというと、縫製工賃が下がり続けてきた20年の歴史です。

具体的な金額を挙げるとリアルになりすぎますので数値をぼかして説明しますが、

例えば、
20年前のオーダースーツの縫製工賃が1着20,000円でした。(仮定します)
しかし、今から15年前頃から(丁度アオキ・青山さんの台頭と同時に)中国縫製のオーダースーツが登場するようになり、当時中国は10,000円で縫えることで、
国内縫製をどんどん侵食して行ったのです。
そして国内の縫製工場はこれに対抗するため縫製工賃を少しずつ下げていき、ついには14,000円になってしまったのです。
この過程で縫製工場は、賃金を切り下げ、また設備投資も人的投資も出来なくなり今に至っています。

それが今、縫製工場は大きな追い風を受けています。

それは、中国の人件費高騰元高、円安ドル高です。

つまり、これまで10,000円で収まっていた中国の工賃が中国国内の人件費高騰・円安の影響を受けて14,000円位にまで一気に高くなってしまったのです。

これは縫製工場にとっては千載一遇のチャンス。

品質は国内の方が良いに決まっていますから、同じコストなら販売者は国内縫製を選ぶはずです。

・・・と、ここまでは一般の皆さんも共感を得られる話だと思いますが、問題はここからです。

ここから先、実は国内の縫製工場は千載一遇のチャンスでありながら工賃を上げられないのです。

それは・・・
ありていに言いますと、1つには縫製工場経営者の弱腰さが第1にあり、もう1つには大企業の巧みなプレッシャーにあると思います。

つまり、縫製工場の経営者はバブル崩壊以降、何度も同業の縫製工場の倒産を横目に見て、値上げにより顧客が減ることが恐ろしくて仕方なく、値上げの申し入れが怖くて言えない状況があります。
また、大手企業はさすが大手だけあって、自分が儲かっても下請け工賃を引き上げましょうなどと言う会社はどこにもありません。
(最近のトヨタはそうではなく、自ら下請けの儲けを増やすようにしていることは敬意を表します!)

そんなこんなで縫製工場は工賃単価を上げられず、多少数量が増えても企業収益には殆ど影響が出てこないのです。

私は、アベノミクスが地方まで浸透しない元凶は正にココ↑にあると思っています!
(どうして政府はこの点で何もしないのでしょうかね・・・不思議にすら思います。)


では、どうすることが良いのでしょうか?
私はここは心を鬼にしてでも縫製工場は値上げをするしかないと思います。

理由は1つだけ。
それは今の縫製工場の賃金体系では従業員に幸福をもたらせないからです。

縫製工場のある場所はどこでも田舎です。
ですからお金も都会よりは全然使いません。だから都会と比べ賃金水準が低いのは仕方がないと思います。

ですが、今の全国の縫製工場の賃金ベースは、その土地の最低賃金に限りなく近く、底辺に張り付いた賃金です。

これでは働く人達に金銭面で幸福感を与えることが出来ません。

こういうと、よく仕事をお金で量りやがって!と異を唱える人もいると思います。
しかし、彼らにも生活があり、生活が向上する道筋がなければ幸せになれないと思います。
↑このように考える人には正社員でありながら時給800円で給料が計算され、しかも閑散月には時短で早帰りをさせられる従業員のことを自分に当てはめて考えてみてもらいたいと思います。


また別の見方で説明してみましょう。

工場の収益です。

縫製工場の場合、会社の損益を簡単に説明しますと、売上は縫製したスーツに比例した売上(単価×着数)です。
一方で、経費はというと、半導体産業のように巨額の投資は縫製業界には必要ありませんし、既にある縫製工場はある程度減価償却が進んでいますから、償却を無視すると、経費=人件費です。

分かりやすく言うと、縫製工場は売上(単価×着数)から人件費を引いたものが利益です。
つまり、人件費を少しでも上げてしまうと、アッという間に赤字に陥って経営が立ち行かなくなってしまうのです。
しかも今の人件費は先述の通り既に削れるだけ削った後の状態だということです。

企業である以上は、売上を増やして人件費をカバーと考えると思いますが、ここにも罠がありまして、売上を増やすためには単価か着数を増やしますが、縫製工場は労働集約的な産業のため、着数を増やすことは、人員の増員となり、売り上げが増えても同じだけ人件費が増え、利益が上がらない構造です。

つまり工場が利益を上げるためには単価を引き上げるしかないのです。

今、時代はようやく縫製工場にとって長いトンネルを抜けるところまで来ています。(縫製工場と言っても既製服縫製工場はまだまだトンネルの中で、オーダー向け縫製工場に限った話です。

ここで適切な利益を上げて、次の時代を生き抜く原資を蓄えなければなりません。
でも、ここで培った原資は次の世代の財産ですからきっと販売店側にもプラスに働きます

私もグループに縫製工場を抱える身として、どうか販売店側も縫製工賃を上げることに一定の理解を、、、と考えています。


posted by オーダースーツのヨシムラ at 15:17| Comment(2) | 仕事(縫製工場) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
商品の品質を維持するため、社員のモチベーションを上げるため、
工賃を上げることは仕方ないことだと思います。
モチベーションが落ちると、不良品の発生率も高くなります。
不良品が発生すると、それをカバーするために3倍近くの
コストが結果かかります。

昨今の非正規社員のテロ行為(アグリフーズ、ベネッセなど)は、
能力を正当に評価されていないことへの怒りがあります。
その怒りで会社を潰されるくらいなら、工賃を上げたほうがましです。
Posted by 運河の住人 at 2015年02月27日 20:05
運河の住人さん

コメントありがとうございます。

工賃の引き上げは、出来れば品質を維持するためでもなく、まして従業員によるテロ行為(?)を起こさないためでもなく、
従業員のモチベーションが上がり、品質向上のためにやりたいと思います。

その上で、会社の状況が良くなった暁には、次にはミシン等機械の入れ替えですね。

ミシンの世界も日進月歩で良い物がどんどん出ていますが、現状のお金のない縫製工場は、現在使用しているミシンが壊れるまで使い、壊れた後、代替品をいかに安く手に入れるか?しか考えられない経営状態ですが、これが、良い物を作るためには例え高額であっても手に入れなければならないという発想に切り替わるかではないかと思っています。

Posted by 吉村 at 2015年02月28日 13:44
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