2022年10月19日

インフレはつづく?

今日、Newsを見ていたのですが、日銀の黒田総裁が衆院予算委員会で、来年はインフレが落ち着くという発言をしたことにメディアが非常に批判的に書いていました。

・黒田氏は来年3月任期切れだから「来年のことは知ったこっちゃない!」という感じだ
とか、
・足許のインフレで庶民が苦しんでいるのが分からないのか!
などでした。

まぁ、相変わらずワイドショー的な庶民の味方を語るようなメディアが総じて厳しく書いていますが、どうなんでしょうね・・・

私は、個人的にはメディア(あるいはその視聴者)は何を求めているのか?
どうして欲しいのか?良く分かりません。

誰だか忘れましたが、海外に住んでいる元芸能人の人が「日本に戻ると何でも安くてありがたい!」と語っていましたが、その通りなんだと思います。
つまり日本の物価が安すぎるのです。

しかし日本人はそれに慣れてしまった。
バブル崩壊以降は、インフレではなくデフレ(物価下落)社会が長く続いていましたからね。

でも、本当はそっちの方が異常な世界です。

何故なら、明治の初期に通貨はそれまでの“両”から“円”に変わりました。
その時の、1両は現在でいえば7-8万円相当の価値だったらしいですが、それが1円です。
つまり、1両というお金に対して物の値段は70,000〜80,000倍になっている訳ですから、歴史の経過とともに物の価値が上がっていく(通貨価値が下がる)というのは必然なんでしょう。
だって、1円の下の“銭”なんて現在では存在しないですし、1円硬貨ももう皆さんにとっては無くても良い通貨でしょうから。

つまり年月とともに物価は少しずつ上昇していくものなのです。

歴史、そして世界はそれを受け入れてきたのに、何故日本人は受け入れないんでしょうね。
ガラパゴスと言われるのも無理はないと思います。

またこういった無知な大衆(←失礼な言い方だと思います。すみません)に迎合する形で、インフレを過度に悪者扱いする政治家も間違っていると思います。

インフレは急激なものは良くありませんが、適度なインフレはむしろ経済にはプラスです。

何故なら、
インフレが見込まれれば、人はタンス預金をしてお金の形が下がるぐらいだったら、将来有望な物に投資するでしょうし、投資しないまでも、来年値段が上がるならといって物を買い、消費が進むでしょう。
そうすれば、企業は儲かり、それが人に分配されるから
です。

それを値上げ=悪、値上げをする企業は悪い、価格維持をする会社は正しいみたいに報道し、これが社会ムードを醸成してしまうと、皆が我慢する、欲しがりません勝つまでは!になってしまい、一億総清貧社会になってしまいます。

それで良いのでしょうかね?
資本主義である以上は、努力して立身出世し、財を成すことは正しいこと、素晴らしいことではないでしょうか?

だから私は経営者としてはインフレ以上に稼ぎ、従業員へはインフレ以上に給与を与えられれば、緩やかなインフレには大賛成です。

ところで、このインフレ、ファッション業界ではどうなっているでしょうか?

実のところ、この秋冬から殆どのブランドが価格改定をして値段が上がっています。
上がっていなくても、例えば今まで10万円のスーツはゼニアの生地を使っていたところが、従来1ランク下の生地だったキャノニコを使ったりと実質値上げをしています。(残念ながら当社もそのような対応をしています。)

これは生地が好きな慣れた人ですと見ればわかるかと思います。

ただ、難しいのがこの業界でのステルス値上げ

どういうことかというと原材料の混紡率目付を変える方法

混紡率というのはウールやポリエステル等の原材料の内容で、目付というのは生地の重量(つまり原料の使用量)です。

目付の方はシーズン性がありますからあまりごまかしは利きませんが、見落としがちなのは混紡率です。

特に、安さを売り物のしているメーカーの商品は要注意です。

なぜ要注意かというと、安さを売りにする会社は従来この価格帯の商品を中国やインドネシアなどで縫製することでコストを下げてきました。

ですが、これらの海外縫製こそが昨今のインフレの影響と円安の影響を強く受けているからです。
つまりインフレで20%<コストが上がり、更に為替で30%上がれば1.2×1.3=1.56倍のコストアップになっているからです。
物には、原価というものがあり、値下げをするにも限界があります。
原価を無視して下げることはできませんからどこかで無理をします。

その無理の行きつく先が、混紡率です。

読者の皆さんも調べてみてください。
安いスーツの内ポケット裏についている品質表示や原産国表示を。

従来一番安いスーツは、ウール50%ポリ50%ぐらいでした。※
(※:昨今、ハイテク繊維として高価なポリエステルもあるためこれは例外)

それが来年あたりからはウール30%、ポリ70%になりますから。

実のところ、当社でも最廉価商品は海外縫製ですし、ウール50%ポリ50%です。
そして、今、コストを下げるためにウール30%の提案を生地メーカーから受けています。
誘惑は甘く、一時の快楽をもたらします。
どうするかはもう少し熟考しますが、私としてはウール50%は維持したいと考えています。
posted by オーダースーツのヨシムラ at 08:11| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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