今日は私の業界でのM&Aについて考えてみます。
コロナが明けた辺りから最近私の業界(アパレル、オーダースーツ、縫製工場)ではM&Aが特に増えてきました。
皆さんがご存じの例で言えば、麻布テーラーは一昨年、紳士服の青山に買収されましたし、上場不動産会社であるランドビジネスさんは、昨年縫製工場を2社、紳士服販売チェーン?を買収し、異業種進出を始めました。
またとある関西圏の安売りオーダースーツチェーン店さんもオーナーさんが株式譲渡したなど結構身近にM&A話が多くなっています。
そんなファッション業界M&Aですが、業界人だからこそ分かるのですが、実は1つ大きな傾向があります。
それは、業績不振型のM&Aばかりなのです。
(この逆は、利益を十分出している企業を高い買収価格で買い取るタイプのM&Aです。)
つまり、既存の経営では上手く行かず問題を抱え、そこを新たな経営主体が買収するといった形です。
例えば、麻布テーラーさんで言えば、10-15年前一世を風靡していた麻布テーラーさんは近年(M&A前)は納期が2か月とか、良い場所での出店が出来ていないとかの問題を抱えていました。
麻布テーラーといえば昔は上場企業位の規模・実力があっただけに業界人としては残念に見ていました。
それを、青山商事がオーナー家から買い取ることで、青山流に強烈な改革を行ったり、青山の資本を使い良い場所へ出店したりすることで、買収後は良い方向に向かっているような気がします。
でもそこには従業員の方の血の滲むようなご努力あったことと思います。
さて、ここまで他社の話をしましたが、実は私自身はこれまでのビジネスキャリアの中で5社の企業買収の経験があります。
私の会社は先述の会社と比べれば小さいですから予算も少なく、皆、業績不振型の買収ばかりですが、数度の買収経験から
買収が成功するか?失敗に終わるか?そのために何が必要か?
はっきり分かります。
成否の境目はたった1つ。
【従業員が危機感を持つか、どうか】です。
私のキャリアで成功した例は、三久服装でしょうか。
同社はもともとハンドメイドの縫製工場でしたが、当時の主要取引先から1年中閑散期料金を適用され、集積が悪く、当社が資金を出す時は会社倒産の直前状態でした。
ですからそこで資金を出した当社は大変感謝され、事業改革に協力して貰え、当時ヨシムラ側で持っていなかった仮縫いのノウハウなどは逆に教えてもらい、従業員と大変良好な関係が築けました。
一方で、十分な成功を収められなかったケース(どの会社とは言えません・・・)では、買収当時会社が倒産直前の状態であったにもかかわらず、当時の経営者がそのことを従業員に悟られないよう腐心したため、結果、買収後の従業員と危機感の共有ができず、新たな経営陣を受け入れるのに時間がかかり、苦労したという経験があります。
企業のM&Aというと言葉のイメージから、どこか金持ちの資本家が従業員を無視して会社を買い取るみたいな事を想像しますが、それは見えている部分だけです。
新たな買収者は大きなリスクを冒して会社を買いますし、
従業員は、現状の不振状況を作ったのは前経営者だけでなく自分達も連帯責任があるにも関わらず、そのことを忘れて、気の良いお金持ちがパトロンになってくれた!だから安泰!なんて思ったらどんな会社でもどんな経営者でも会社は潰れます。
つまり、よく言う“ゆでガエル”の例です。
業績不振で買収された、という事実を正面から受け止め、現状の何かを積極的に改善しようと全社(従業員・経営陣)が一丸とならない限り、簡単に明るい未来は来ないのです。
でも、苦労した先には明るい未来が必ずあります。
当社グループの縫製工場(青森)は過去に二度経営危機がありました。
でも、今では縫製工場として業界内でそこそこ認められる存在になっています。
そうなる原動力を作ったのは、もはや株主ではなく、従業員なのです。
会社の未来を左右するのは従業員の気持ち&頑張り次第なのです。
(もちろん経営者も死ぬほど頑張りますよ!)
2024年04月03日
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