読者の皆さんはビッグヴィジョンが年に1度企画する『絶対の逸品』という商品をご存知でしょうか?
詳しくは、こちらに書かせて頂きましたが、これは当社(グループ)が総力を上げて企画した渾身の生地(を使ったスーツ)です。
ご存知の方も多いと思いますが、当社は他のオーダースーツ店と比べると、グループに@生地専門商社がある。A縫製工場があるという強みがあり、コンペティター企業と比べると、『生地に対する思い入れ』と『縫製に対する思い入れ』が強いのが特徴です。
そしてこの絶対の逸品は、『生地に対する思い入れ』という点では産地まで赴き、材料を吟味していますし、『縫製に対する思い入れ』ではハンドメイドの仕立てまで提供できるという強みがあります。
そして今年取り扱う絶対の逸品は何かというと、、、
えっ?カシミヤ100%の生地なんてどこでもあるじゃない?
・・・そう思う人もいるかも知れません。
そんな皆さんにお聞きしたいのは、「それはジャケット(コート)の話ではないですか?」と。
そう、確かにカシミヤのジャケットやコートはどこにでもあります。
でも、カシミヤ100%のスーツは相当のお金持ちでなければ持っていないはずです。
何故なら、殆ど流通していないから。。。
詳しく話すと長くなりますから、短く説明しますが、洋服の生地には大きく2種類(梳毛somouと紡毛boumou)あって、一般的なカシミヤのマフラーやジャケット・コートは紡毛という、毛足の短いものを使用しますが、スーツに使う梳毛は長い毛足のものを引き揃えて作るため紡毛よりはるかに高度な技術が必要で、仕上がったものは太さが均質で、滑らかで光沢感があるのが特徴です。
※:代表的な紡毛の生地はツィードですが、皆さんイメージの通りツィードはやや粗野でざっくりしたイメージがありますが、紡毛ですとそういった風合いになります。
で、今回のカシミヤ100%の生地は梳毛ですから、非常に良いものになっています。
これはメールマガジンなどにも書かなかったのですが、実はこれを作るのには本当に苦労しました。
全国あちこち飛びますからね。。。
まずは、原毛の仕入。
一般に、メンズの洋服地の産地は愛知県一宮地方(尾州)ですので普通でしたらそこで入手できるのですが、、、上質なカシミヤ100%素材はそこでは入手できませんでした。
入手するために訪れたのは・・・大阪は泉州
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、泉州は深喜毛織さんやなくなった藤井毛織さんなど日本のカシミヤの一大生産地。
(でも、泉州は紡毛主体なので、梳毛織れない!)
そこで原毛を入手しました。
原毛は、カシミヤ山羊の毛を狩った状態ですからこれを今度は「糸」にしなければなりません。
これも本来でしたら尾州で出来ることなのですが、カシミヤ原毛は細く繊細なため、尾州では出来ず、なんと!鳥取県まで飛んでいきます!
聞けば最高級の原毛にするのは鳥取にある紡績屋さんに頼まないとダメだそうで、日本で一番といわれる紡績工場に依頼をして、糸にします。
それから、今度はようやく尾州に戻り、機織(はたおり)になりますが、これも高速織機で織ってしまうと風合いが飛んでしまいますから、低速のションヘル織機を、しかもションヘルでは日本で最高峰といわれる葛利毛織さんに依頼して織り上げました。
ふ〜っ、説明を書くだけでも大変ですが、それにしても全国を飛び回りました。
何もかも初挑戦です。
カシミヤ100%スーツ地は国内ではミユキ毛織さんが最高級のナポレナシリーズで製造していましたから、調べれば簡単に出来るだろう・・・と思っていたのですが、実はミユキさんは完全国内生産ではなく、一部を英国に委託するなどしており、ミユキさんのルートに乗せれば、、、と安易に考えていた当社にとっては、思惑が外れ大変でした。
こうして生まれたカシミヤ100%スーツ
私自身も1着仕立て中(もちろん仮縫つきのハンドメイド!)ですが、
是非、皆さんにも知って頂きたいと思います。
この商品は正直当社でも98,000円と高価ですから、おいそれと皆さんもお求めにはなれないと思います。
でも、お店でご覧になったり触ったりするのにはお金は掛かりません。
スーツが好きな方でしたら是非触ってみてください。
買ってくれ!とは申しません。
こんな機会はそうはありませんから、是非知って頂きたいのです。
この商品は原毛の産地(内モンゴル)を除けば全て国内で最高水準の技術者達によって作られました。
その“なれそめ”を考えるだけでもスーツ好きには堪らないと思いますよ。